「大菩薩嶺」・登山紀行

『日本百名山・登山紀行』

　「大菩薩嶺」①（プロローグ）



　澱んだような都会の星の無い夜空が、ビルの間に僅かに広がっている。

  平成１０年１２月２６日（土） 午前４時３０分。

いよいよ恒例の年末年始の山の旅へ出発する。

準備をしっかり整えて、大阪市内の友人の家に集合する。

言い知れぬ緊張感が全身を包み込んでいく。

　何故、緊張するのか？

今回の予定を紹介しましょう。

平成１０年１２月２６日（土）  出発     

　　中央道・勝沼ＩＣで降り、午後「大菩薩嶺・２０５７ｍ」登頂予定。

　　往復５時間。

　　翌日の行動を考慮して、清里高原まで移動後宿泊。

平成１０年１２月２７日（日）

　　長野県・川上村「甲武信が岳・２４７５ｍ」登頂予定。

　　往復９時間。

　　韮崎町で宿泊。

平成１０年１２月２８日（月）

　　埼玉県・両神村「両神山・１７２３」登頂予定。

　　往復８時間。

　　埼玉県・大滝村で宿泊。

平成１０年１２月２９日（火）

　　山梨県・甲府市・石和町の石和温泉で休息日。

　　石和温泉で宿泊。

平成１０年１２月３０日（水）

　　東京都・奥多摩町「雲取山・２０１７ｍ」登頂予定。

　　往復８時間。

　　山梨県・丹波山村で宿泊予定。

平成１０年１２月３１日（木）

　　甲府市から富士五湖、朝霧高原を抜け富士宮市から東名高速で帰阪。        



　と言うスケジュールである。

厳冬期を避け、比較的雪の少ない奥秩父の山々を巡る旅である。

　しかし、それほど容易な旅ではない。

とにかく寒い。

途中の道路の凍結及び積雪。当然タイヤ・チェーンは必須。

年末年始の混雑。

４つの山を登る疲労。

楽しみではあるが、相当の苦労が予想される。

出発前から様々な思いが去来する。

武者震いに似た悪寒が全身を流れて行く。

　さて、どんな旅になるのだろうか。


今まで、３０以上もの山に登ってきた。

登るたびに自らに問い掛け続けてきた永遠のテーマ「何故、山に登るのか？」。

なんと、今回の旅が、その答えを見出す旅になるとは考えもしなかった。


平成１０年１２月２６日（土）午前４時３０分。

昂奮を抑えるかのように、ゆっ～くりと車が動き出して行く。



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