「瑞牆山（みずがきやま）」・登山紀行

『日本百名山・登山紀行』

 「瑞牆山（みずがきやま）」①（登頂）




  今日は「瑞牆山（みずがきやま）」登頂を目指す。

  １１月２日（月）午前８時。「増富ラジウム温泉郷」の旅館を出発する。

登山口となる「みずがき山荘」までは車で１５分程だ。

道の両サイドは鮮やかな紅葉だ。

枯れ葉がフロントガラスに舞い下りて来てカサカサと音を立てて転がっていく。

風が少し吹く度に花吹雪のように枯れ葉が車を包んでくれる。
                                                             
  遠くには今から登る、標高２２３０ｍ「瑞牆山（みずがきやま）」が黄金色に

チラチラと揺れて見えている。

昨日停めた同じ場所に車を停める。



  午前８時４０分。いよいよ登りはじめる。

標高２２３０ｍの「瑞牆山」の頂上までは４時間弱で登れる。

  まだ、目覚めていない山を静かに登っていく。

”富士見平”までの道は昨日登った道だ、２度目の道を登るためか気負いは全く

ない。

心の中は、何の不安も無い。

  まだ目覚めていない山は、ただただ静かだ。聞こえる音は自身が歩を進めるたびに

枯れ葉を踏むカサカサという乾いた音だけである。

  眠れる山が次第に目覚めの時を向かえる。

下山する登山者とすれ違うごとに。

風が枯れ葉を舞い落とすごとに。

遠くで鳥達が密やかに鳴きはじめるごとに。

まるで、赤子がむづがりながら起き出すように山が次第に目覚めていく。

  紅葉も終わりを向かえるミズナラ林の”富士見平”に到着した。

午前９時３０分だ。

後は少し塩見川の源流部になる開けた河原まで下り、２時間ほど登れば頂上である。

  頂上までの道は大きな岩を幾つも越えて行く、所々には梯子やロープが掛けられ

ている。

振り返れば雪をかぶった富士山が疲れを癒してくれる。

時折、下りの登山者と慎重にすれ違いながらさらに高度を稼いでいく。



平成１０年１１月２日（月）、午前１１時２０分。

奥秩父・標高２２３０ｍの「瑞牆山」登頂。


  日本百名山３０座目の登頂である。





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