「塩見岳」・登山紀行

『日本百名山・登山紀行』

　「塩見岳」①（大阪）



　今日も一日蒸し暑いんだろうな～と、思いながら。

カッターシャツに袖を通して行く。

最後にズボンのポケットにキュッと扇子を差し込んだ時、半分ぐらい日常の感覚

に戻って行く。

　大阪に帰り着いて６時間ぐらいだろうか、心地よい程度の疲労感が残っている。

前々から読みたかった本を電車の中で読み始める。

しばらくして全身に機械的だか爽やかなクーラーの冷気が降り注いでくるのを感

じる。

　山の空気を大阪にまで持ち下りてきたような感じがする。

出発した金曜日の蒸し暑い都会の空気が２日しかたっていないのに、すっかりと

涼しげに変わっている。

　ムシムシする様な熱気で、急に下界に下りてきた感覚に戻されるよりかは、楽

しい山旅が続いているような感じがして嬉しい。

　通勤でいつも通いなれたプロムナードからは、大阪駅の北口が見下ろせる、数

十人の若者がリゾートにでも出発するのか、バスを待ちながら、とても楽しそう

に談笑している。

　オフィッスの近くにあるホテルの正面入り口には、高校野球の出場校の名前の

書かれた看板が２つ立てかけられている。

「山に登っている間に”ふるさと”に帰えらなくてよかったね」と。

自分の母校のような感覚で応援している気持ちが不思議だ。

　オフィッスの１０階まで、たどり着いてＩＤカードを差し込んだ瞬間に、ほぼ

、非日常から日常へと、身も心も確実にシフトしていく。


　平成１０年８月１０日（月）ＡＭ８：１５

夏の盛りだ。




                                    　　　       ～次へ～
『塩見岳・登山紀行』
『日本百名山・登山紀行』
